新たに、血糖値を下げてくれる物質が発見されました。それがAMPキナーゼと呼ばれている酵素です。その研究のプロジェクトの主任として参加をされていた首都大学東京 大学院 人間健康科学研究科教授 藤井宣晴先生が、TV番組「主治医の見つかる診療所」に出演しAMPキナーゼ酵素が血糖値を下げる仕組みを解説。その放送された内容を紹介します。
AMPキナーゼ酵素がどのように血糖値を下げるのか?
これまでは、食べ物を体内にいれると、血液中に糖が増え血糖値が上昇する、すると、すい臓からインスリンと言うホルモンが分泌され、そのインスリン働きによって細胞に血糖をとり込みエネルギーとして使う事で血糖値を下げる。という事が知られてきました。
しかし、この場合、使われずに余ったインスリンは糖質を中性脂肪に変えて脂肪細胞に蓄える働きをします。そのため、その量が多くなると血管の動脈硬化をすすめてしまい、それが様々な病気を発症する原因となるので、カラダの為には糖質を控えてインスリンの分泌を抑えるようにと言われてきました。
ところが、今回、藤井先生たちのプロジェクトで明らかになった「AMPキナーゼ酵素」の働きは、インスリンとは全く別のメカニズムで血液中の糖を消費してくれるので、体内に脂肪を蓄える心配がない事から中性脂肪の改善や糖尿病予防につながると注目されているそうです。
藤井先生の話によると、AMPキナーゼは全身の細胞に存在していて、糖や脂肪の燃焼を促進する物質です。普段はスイッチがOFFとなっていて何も働いていないそうです。ところが、一旦スイッチがONになると、筋肉細胞の中から働きかけて血液中の糖を抜き取ってくれるのだそうです。
AMPキナーゼのスイッチがONになり活性化されると、インスリンが分泌されなくても糖を筋肉に引き込んで使ってくれるのだそうです。その結果、糖が中性脂肪に変わりにくいので血液も改善されると言うわけです。
この物質の発見は、90年前に血糖値を下げるのがインスリンだと発見した以来の快挙なんだそうです。
この研究に貢献することになった藤井教授は、1999年に米ハーバード大学のジョスリン糖尿病研究センターに留学。
その翌年の98年、上司になるロ-リー・グッドイヤー博士が、「筋肉の収縮によってインスリンとは全く違う経路で糖が筋肉に取り込まれている」という画期的な論文を発表します。
その後、さらに詳しく研究が進められ筋肉細胞中にある「AMPキナーゼ」という酵素が糖を取り込んでいる事実を突き止めることになります。そして研究プロジェクトの主任として藤井先生が参加することになります。
AMPキナーゼ酵素を活性化する方法
では、どのようにしたらAMPキナーゼ酵素スのイッチをONにする事が出来るのでしょう。
AMPキナーゼをONにして活性化するには筋肉を動かす事が大切なんだそうです。筋肉を使うと細胞内のエネルギーが減ってきます。それによってスイッチがONになるそうです。
藤井先生は、毎日自転車を乗ることでAMPキナーゼをONにして活性化しているそうですが、これは運動が好きな人ならいいですが、私のように運動をするのが苦手な人は毎日自転車に乗るのは正直無理!
ですが、安心してください!藤井教授の話では、無理に頑張って激しい運動をまとめてしなくても、少し息切れするレベルの運動をこま切れで、1日の合計が20分位の運動をすれば良いそうです。
例えば、自宅で実践するならステップエクササイズ。これは、ステップ台の昇降運動の事です。この運動をすることで体のなかで特に大きい太ももの筋肉を使うのでAMPキナーゼ酵素を効率良く活性化することが出来るんだそうです。
これに加えて、なるべく日常で階段を使ったり、掃除、布団を干すなど、トータルで20分運動をする事を心がけましょう。
また、小さなお子さんがいる方は、お子さんをおんぶしたりして遊ぶだけでも十分活性化することができるそうです。
【その際のポイント!】
- 食べたら直ぐに体を動かす事で血糖値の上昇を抑えることができ、さらに中性脂肪も溜まらない。
- 運動は続けないと意味がないので、続けられるチョコチョコ運動を見つけてすることが大切。
これまでも運動することで様々な病気を予防できることは良く言われてきました。
さらに研究はすすめられており、運動して筋肉を縮めることで、血管を若返らせるさまざまなホルモンが分泌される事が科学的に解明されているそうです。
そのホルモンは何種類もあるそうですが、それをまとめて「マイオカイン」と言うそうです。藤井教授の研究チームは、数10種類のマイオカインを発見しており今世界で注目されているそうです。
藤井教授は「心臓は収縮することで血液を送り出している臓器なんですが、筋肉も筋収縮することで体を動かすことができるとてもダイナミックな臓器」だと話していました。筋肉なるべく使うようにしたいですね。